モビルサウナ開発秘話③

第三話「鉄の補給管を叩け!」

開発初号機であるMS-01の性能に開発陣は鼻高々であった。
サウナとしての性能、居住空間としての性能は申し分ないものであった。
まさに、「住宅工業のMSはバケモノか!」と某敵役に唸らせるくらいの自信はあった。
(もちろん、近所にそんな人はいないが)

しかし、すぐさまその鼻はへし折られた。
「で、どうやって動かすんですかね?」
そうなのだ。
結論から言うと、重すぎたのだ。
軽トラックの積載重量制限は350㎏。
MS-01は、400㎏を超える大型MSとなっていたのだ。
「これじゃあ、公道を走れない」
誰もが言わなくてもいいことを言いやがって、と思った。

だが、それが事実だ。
開発陣はすぐに、軽量化に取りかかった。
もちろん、MS-01は積載制限の限界値を見るための試作機なので、
軽量化は視野に入っていた。
開発陣もそんなに阿呆ではないのだ。

さらに、開発陣は軽量化の他に、もう一つの可能性を探るべく、
研究に着手した。
そう、合体変形!
…ではなく、簡単に組み立てられるような機構の開発だ。
機甲界はガリアンだが、機構開発は難題だ。
そこで、組み立ての簡素化、拡張性の向上を兼ね備えた、
秘密兵器を開発した。
だが、この秘密兵器が後々、思わぬ展開を見せるのである。
このことについては後の章で述べるとしよう。

さて、軽量化に着手した開発陣は、まず構造体に着目した。
MS-01では、通常住宅に使用する構造体パネルをそのまま使用した。
その構造体パネルを薄くするところから研究を始めたのである。

薄いパネル自体は無いわけではない。
我々は元々、「床段差無し和室床パネル」という、
優れた薄型パネルを通常から生産している。
これを基に再設計をすることにした。
そして出来上がったのが、MS-02「軽量化試作1号機」だ。

釜無川に佇むMS-02

重量は320㎏。
サウナチェアや薪なども積載することができる。
サウナとしての性能もMS-01に劣ることはない。
しかも、見た目もオシャレだ!

そして、MS-02で特筆すべきは、
サウナの心臓部である熱核融合炉、
…ではなく、サウナストーブである。
7月14日のHARJAKAISETにおいて火入れをした、
サトーステンレス製のモビルサウナ専用サウナストーブ、
「SS-01」を搭載した完全オリジナルサウナがこの時完成したのであった。