モビルサウナ開発秘話⑤

MS開発秘話第5話「首都圏突入」

モビルサウナの軽量化に明け暮れていた我々に、ある日、吉報が舞い込んだ。
モビルサウナを海で使ってみないか、というものだ。
そう、まさに我々が熱望していた、「海サウナ」だ。
しかし、現実にはMS−01では公道を走ることができない。
我々は「海を目指して翼を開く」
…のではなく、軽量化して公道を走ることのできるMS−02の開発を急いだ。

MS−02の軽量化は第三話で記した通りに順調に進んだ。

全ての仕様を見直すことから始めた軽量だが、
サウナ自体の小型化、パネルそのものの軽量化、省部材化に加え、
新開発の接続金物、アルミサッシの廃止、
ストーブの軽量化に至るまで、徹底的に見直しを図った。

その努力は、大気圏突入前のホワイトベースを攻撃するクラウンのザクのように必死であった。
しかし、その必死さと比例するように、
例えるなら、大気圏に落下するザクの崩壊するスピードの如く、
急ピッチで軽量化に成功したのである。

そして、その日はやってきた。

2022年9月11日、我々は、
神奈川県逗子市、真名瀬海岸に降り立った。
モビルサウナ初めての「首都圏突入」である。
海岸線から程近い駐車場にMS−02を停め、火を入れた。

海までは階段を降りてから約20m。
充分なストロークだ。
なお、この時の様子は、Laatikkoのホームページに動画が収められている。

https://laatikkosauna.storeinfo.jp/posts/38010421

残暑の日差しの中、海岸で直射日光にさらされるMS−02を見ながら、
開発者に一抹の不安がよぎった。
熱くなりすぎはしないのか、という不安だ。
「持つのか、これで」
しかし開発者の不安は杞憂に終わった。
「す、すごい、外装板の表面温度が下がった」
日陰に入った瞬間、機内の温度とは関係なく、外装板の温度が下がったのだ。

なお、初めて海での実戦を経験したMS−02のことを、
ある開発者は敬意を込めて「まなふぃ」という愛称を付けている。
決して、日向坂46の高瀬愛奈のことではなく、
山梨県出身のモデル高瀬真奈のことでもない、とは本人の談である。