モビルサウナ開発秘話⑦
MS開発秘話第7話「釜無川原、脱出せよ!」
「サウナのデーターは皆、入ったのか?」
「はい、推測できるデーターはすべて」
「驚いたな。外から見たデーターで割り出した性能でも、
テントサウナなど問題外か・・・内部のデーターがわかればさらに・・・」
「あのモビルサウナをもとによくもここまでにしたものだな」
「君の予想以上に苦労はしたがね」
「わかっている」
「これ以上時を遊ばすのはまずいな」
「ああ」
釜無川のサウナはまだ続いていた。
河原の広場は私有地ではなく、誰でも入ることができる。
その分、いろいろな人が出入りする。
我々の姿を訝しむもの、興味ありそうに様子を伺うもの。
そのうち、一瞬の静寂を高い音が切り裂いた。
「対岸から何か発射されました」
「弾道軌道か?」
「は」
「我々の目の前で猪の対策をやるつもりだ」
「サウナ上空はミノフスキー粒子のおかげでレーダーは使えないぞ、どうする?」
「追いかけるまで!接触できるか?」
「1分後に発進、2分50秒でキャッチできます」
「よし」
「フフフ、相変わらずだな」
「猪め・・・」
「聞こえるか?」
「おう」
「大使館のモビルサウナな、あれに対する作戦を改める必要がありそうだ」
「どういうことだ?」
「コンピューターのデーターから推測するしかないが、
件のモビルサウナは軽トラックを中心に自由にタイプを変えられる多用途モビルサウナらしい」
「なに?で、では、今まで私の見ていたのは、モビルサウナの一部分の性能という訳なのか?
あ、あれで・・・では・・・こ、今後どう戦ったらいいのだ・・・?」
「戻れ、検討しよう」
「・・・りょ、了解」
秋の日差しは釣瓶落とし。
みるみると甲斐駒ヶ岳の向こうに沈んでいく夕陽を見ながら、
帰り途に着くのであった。