モビルサウナ開発秘話②

第二話「機能を追求せよ」

2022年7月14日に完成したMSー01は、翌々日の7月16日、
HARJAKAISETの日を迎えた。

「HARJAKAISET」を迎えるMS-01

フィンランドでは、初めてサウナに火を入れる時、
日本で言うところの「上棟式」にあたるセレモニー「HARJAKAISET」を行う。
その意味合いは…「飲む理由」だそうだ。

ここで初めて、MSー01は火とヒトを内包することになる。
薪ストーブは、使用する前に「空焼き」するのだそうだ。
鉄板の塗装など、不要なものを熱でどうにかしてしまおうという理屈だ。
薪の用意は充分。
早速火入れをおこなってみる。

当日の天候は曇り、気温は32℃。
箱内の温度は36℃ほどだ。
薪を焚べて10分。箱内の温度は40℃。順調のようだ。
さらに焚べて20分。箱内の温度は43℃。伸びがない。
薪を焚べ続けて30分。箱内の温度は50℃を超えた!
適温だ!
ここで首を傾げる向きもあろう。
50℃で適温とはどう言うことか、と。

答えはこうだ。
「フィンランドでは大丈夫だ」

フィンランドのサウナは、すこぶる「個人的」である。
すなわち、焚べた人が「適温だ」といえば、それが適温なのだ。
「サウナに入りては、己に従え」ということわざは今私が作ったが、
自分の好きな温度、自分の好きな湿度、自分の入りたい時間で入るのが、
「フィンランドのサウナ」なのだ。

話が逸れたが、適温になったサウナにゲストに入っていただく。
温度と湿度の調節は、中に入った人がロウリュすることで行う。
薪を焚べるのも中の人の役目だ。
ゲストであっても例外ではない。

ゲストの反応は上々だ。
温度、湿度共に申し分ない。そして、その熱は壁外に伝わらない。
成功だ。
我々は、最初の大きなハードルを越えた。
サウナである以上、中の熱が逃げないことはもちろんのこと、
その熱が外に伝わらないことが開発上の懸念事項だった。
箱内の温度は70℃を超えている。未知の世界だ。
70℃を超える温度が加わっても、本当に熱は伝わらないのだろうか。
日陰側の壁面を触っても熱さは感じない。
「これならいける」
そう確信をした瞬間だった。